AIと囲碁のこれからを考える―Part01―

本シリーズは、メインライターによる囲碁AI関連の考察記事です。

囲碁AIの現状に関する記事が2018年8月23日に掲載されました。

※画像リンクあり↑

今回は、この記事の内容について考察していきたいと思います。

なお、過去の囲碁AIに関する記事はすでに書きましたので、今回は過去の事項に関しては省いてお話ししていきます。

「AIが人間に取って代わる」 そう言われ始めて、何年経ったでしょうか? 「囲碁AIに教わる時代が来るのではないか」 ...

囲碁AIとは?

囲碁AIとはなんぞや?と思う方もいると思うので、再確認しましょう。

端的に言います。

強さで言うなら、人間より遙かに上にいます。ですが、まともに会話ができません。それが囲碁AIです。

もうちょっと正確に言うなら、評価値という人間には扱えていない言語をしゃべっているんですね。

なお、評価値に関して詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

『究極の囲碁上達ツール アルファ碁Teach完全ガイド』を読了したので、その書評を掲載します。 本書は2018年07月...

囲碁AIの開発のこれから

では、日本における囲碁AIの開発はどうなっているのか、というと……

先の記事から引用しますが、

そんな折、新たなエースが登場した。「AQ」だ。なんと、AQは山口祐さんが個人で開発している。

ご本人いわく、「趣味です」とのこと。そのAQがなんと今大会の予選で、フェイスブックの開発するELFOpenGoに勝利した。

(中略)

一方で、世界の囲碁AI開発は企業がリードする中、日本の企業で囲碁AIを開発するのは、筆者が知る限り、HEROZの「棋神」とトリプルアイズの「Raynz」の二つだけだ。個々で優秀な開発者は多いと思うが、全体の大きな潮流にはなかなかならず、世界のAI開発の現場を目撃した筆者としては、危惧を感じざるを得ない。

この大橋氏の危惧は、前々から予想できていたことでしょう。

実際、日本の囲碁AI開発を引っ張ってきたZENの開発もほぼ個人であり、個人が個人の才能を使い潰すことで進めてきているのが、日本のAI開発でしょう。

個人開発の限界は目に見えていて、それを分かっているからこそ、世界では企業が関わっているのですが、日本において企業での開発で芽が出ないのは、リソースに限界がきていると言うことでしょう。日本社会の現状をそのまま反映していると言っても過言ではありません。

個人的な見解としては、企業は個人開発者を集めるべきで、個人は企業所属として開発を行った方が良かれだと思います。人材のバックアップなしで開発を行い、その分野を潰すのは危険行為ではないでしょうか

このことに気づいてないとしたら、これからの囲碁AI開発の世界は、徐々に先細りしていき、世間的に認知されることも難しくなるでしょう(いや、もうすでにそういう状況に突入しているでしょう)。

囲碁AIの解釈のこれから

ぶっちゃけ言ってしまえば、こちらの方が問題です。

まずは引用から。

さて、囲碁棋士の筆者だが、この大会で世界のAIをめぐる激動を感じ、自分と同年代で活躍する開発者に刺激を受けて、若手棋士を中心に「プロジェクトAI」という研究グループを立ち上げた。

囲碁棋士とは、いま、世界で最も「AIとどう共生していくか」が求められている職業だと思う。囲碁AIの盤上の打ち手の研究はもちろん、棋士の育成に囲碁AIをどう活用するか、棋士から見るAI研究、開発者の方々との交流などを通して、囲碁AIとどう付き合っていくのか、みんなで考えていきたいと思っている。

はっきり言おう。この研究グループになにか意味があるのでしょうか?

実際にTwittergoogle検索でこの研究グループについて調べてみましたが、ほとんど情報がありませんでした。前者では大橋氏のTwitterに1ヶ月前に第1回が行われた、との程度しか書かれていませんでした。後者については全く引っかからずでした(2018年8月26日現在)。

結局人を寄せ集めただけではないか、と思われてもおかしくない状況だと言えます。私がディレクターなら、1回目で目的の認識統一、今後の活動内容・方針を確認……くらいは最低でもやると思いますが、果たしてどうだったのでしょうかね?

さらに言えば、発表の場が見当たらない(Google検索に引っかからない)ことを踏まえると、その研究がどうであれ、日の目を見ることはほとんどない、と言えるでしょう。

そんな研究に何の意味があるのでしょうか?

全くもって意味がありません。こんな状態で、囲碁棋士とAIの関係性がAIとの共生の最先端として一般人の目の前に現れることは、十中八九あり得ません。

囲碁の世界しか知らない人たちでは、もうどうしようもない、というところまでおそらく進んでいるでしょう。

まとめ

筆者は科学者です。だからこそ、だからこそ……絶句したくなります。

前者のバックアップ問題は、日本にいる限り生じるものなので、どうしようもないものかもしれません。

後者の解釈のこれからは、研究デザイン(どういう研究で、どういう結果を出し、どういう風に発表するか)が酷すぎてもう絶望的という印象です。私も研究を行いますが、下手な研究デザインではそもそも論文が書けません(論文に相当する結果が出せません)←もちろん出た結果はどんな結果であろうと受け入れなくてはならないものですよ。

二足のわらじを履く必要はありませんが、二足目や三足目に対して理解が乏しければ、取り残される時代だと私は考えます。

以上をもって私の考察とします。また世の中に進展があればこのシリーズで書いていきます。(おわり)

※Leela由来の解釈ソフト「Lizzie」に関しては、以前述べた囲碁AIの問題点に変化がないので、取り上げませんでした。