19路盤に入って、一番最初に習うのが「星」と「小目」という打ち方だと思います。プロの碁を見ていても多くが星と小目の組み合わせです。では、星と小目はどう違うのでしょうか?今回は、小目に着目してお話ししていきたいと思います。

 

小目は星と違い、「ベクトル」があります。「ベクトル」というのは、「向き」と「大きさ(力)」で規定されるモノですよね。まず、「向き」に着目して見ていきましょう。
【1-1図】右上隅小目というと、大抵この位置に打ちますが、上辺と右辺、黒にとって価値が大きいのはどちらでしょうか?

 

【1-2図】小目に対するカカリは基本的に上辺からのカカリのみです。

 

【1-3図】裏ガカリという例外的な技もありますが、これは黒2などの「シマリ」を許すので、部分的には黒が良いワカレです。

 

【1-4図】黒1のような「シマリ」を打つと隅の地を効率よく獲得できる、と言われています(かなり条件が整わないと、隅の地が荒らされないため)。これと比較して…

 

【1-5図】カカリを打たれると、隅の黒地が非常に小さくなります。

 

【1-6図】つまり、この状態で「価値」の比重が「上辺>右辺」となっている訳です。…(答え)

 

【2-1図】続いて、「シマリ」について。小目から「シマリ」を打つと「価値」の「向き」が変わります。

 

【2-2図】本図と次図を比較すると分かりますが…

 

【2-3図】こちらの方が黒の模様が「立体的」になります。なので、白から辺に打つなら、右辺に打った方が良い、という理屈になります。つまり、右辺の方が「価値が高い」ということになります。

 

 

さて、ここまで「向き」の話が中心でしたが、ここからは「力」の方にも触れていきます。

 

【3-1図】シマリといっても、今まで触れてきた「小ゲイマジマリ」もあれば、図のような「一間ジマリ」もあります。そして、ここに右辺に対する「力」の違いがあります。

 

【3-2図】小ゲイマジマリは、三線にある分、隅に隙はありませんが、白1などと上から消す手段が生じます。

 

【3-3図】一方で一間ジマリは、四線にある分、上から消す手段はありませんが、白1と三線に迫ることで隅に手段が生まれます。

 

つまり、小ゲイマジマリは右辺に対するベクトルが少し弱いが、一間ジマリより隅に強い。一間ジマリは隅に手が残る側面はあるが、右辺に対するベクトルが小ゲイマジマリより強い、といえます。これは「位置関係」を踏まえれば、自ずと見えてきますよね。

 

さて、ここまでの内容を実戦図を使って考えてみましょう。

 

【4-1図】「秀策のコスミ」と言えば、この局面の黒7ですよね。ここまでのワカレもこの棋理に従っています。黒1で上辺の価値が上がったので、白2と打つことで、上辺への手がかりを付けながら、隅に打つ。黒3で次に右上のシマリを見ながら、右下隅を占める。

 

【4-2図】江戸時代は、「コミ」という考え方がなかったこともあり、右辺のこの構えは「理想型」とされていました。右上も右辺の価値を高め、右下も右辺の価値を高める、と首尾一貫しているわけです。

 

【4-3図】右辺の価値がほどよく上がるため、右下にカカるとハサミを打たれ、右上から右辺にかけて良い地になります。

 

【4-4図】ちなみに、右上隅のシマリを優先すると、今度は白が先に右下隅に打てます(白が若干打ちやすい)。

 

【4-5図】(4-1図の再掲)そのため、4-2図のルートを阻止するために白4とカカり、黒5には同じ理屈で白6とカカリを打つわけですね。この後の黒7の話は「戦術」的な話になるので、今回は割愛。

 

小目のベクトルのお話、いかがだったでしょうか?

もし楽しめたなら、このような価値判断の背景の話を厳密性を増した形でわかりやすく書いたものがありますので、Contentsの総論のPDFを参照ください。